筋肉疲労による肩こりの原因
こりの原因は抗重力筋の疲労
筋肉疲労による肩こりの症状としては、以下が挙げられます。
- こっている筋肉を指で押すと、鎧のように硬く、また押したときに痛みを伴う
- 頸(くび)から肩にかけてセメントで固められ、上から押さえつけられる感じ
- 頸や肩に重たいものを載せ押し当てられているような感じがする
- 頭が重い、頭を締め付けられるような症状を伴う
これらの症状を引き起こす筋肉には、以下の3つがあります。
- 僧帽筋(そうぼうきん):後頭部から鎖骨や肩甲骨の端(腕に近い部分)と、背骨から肩甲骨の内側の間にある筋肉
- 肩甲挙筋(けんこうきょきん):後頭部から肩甲骨の内側につく筋肉
- 脊柱起立筋(せきちゅうきりつきん):背骨に沿って張っている筋肉
この3つの筋肉は、力を抜けば重力に引かれて前へ落ちてしまう頭を持ち上げている筋肉なので、「抗重力筋(こうじゅうりょくきん)」と呼ばれます(実際には、胴体や脚にも抗重力筋に分類される筋肉が多数あるのですが、ここでは肩こりにつながる筋肉をまとめて表現する言葉として、抗重力筋を使わせていただきます)。
この抗重力筋がなんらかの原因で疲労を起こすと、肩こりになるわけです。抗重力筋が疲労を引き起こす原因は、大きく7つに分けられます。
- 原因1:好ましくない姿勢や、姿勢を変えずに長時間作業を続けた場合
- 原因2:頸から肩にかけて冷えすぎてしまう場合
- 原因3:目の疲れ(眼精疲労)
- 原因4:肥満、なで肩の場合
- 原因5:ストレスが大きい、ストレスを解消できない場合
- 原因6:額や眉、まぶたのたるみによる場合
- 原因7:体に適していない下着の装着や下着で体を締め付けている場合
これらについて、詳しくご説明します。
原因1:好ましくない姿勢の保持
座っている場合、立っている場合のどちらにも共通で、あまり好ましくない姿勢をとっている場合や、姿勢を変えることなく長時間作業を続けた場合に肩こりが発生します。
好ましくない姿勢とは、背中が丸くなっている猫背で、両腕が胴体よりも前に垂れ下がった状態です。また、顎を突き出し胴体よりも顔が前へ突き出された状態(何かを覗き込むような格好)も好ましくありません。一時的にこの姿勢をとるのは問題ないのですが、日常生活の中でそのような姿勢を長時間とり続けていると、筋肉は強く働く必要が出てきます。
また、長時間同じ姿勢でいることも、筋肉自体が血管を圧迫し、筋肉が酸欠となりコリが生じるため良くありません。
好ましくない姿勢を続けていると感じる人は、好ましくない姿勢による肩こりをご覧ください。詳細な原因や解消方法に解説しています。
原因2:冷えすぎる
外の気温が上がり、エアコンを作動させて室内の気温を下げている場合に多く見られます。環境への配慮から「クールビズ」が叫ばれ薄着になる機会が増えてくると、頸(くび)から肩を冷やしてしまって肩こりを感じる場合があります。
エアコンが効いたオフィスなど、やむおえず寒い環境に居なければならない人は、冷えによる肩こりをご覧ください。詳細な原因や解消方法に解説しています。
原因3:眼精疲労
眼の疲れが、肩こりに影響を与えるケースもあります。
適切に視力矯正がなされていないことが、眼の疲れを招く理由の第一位を占めています。長期間、近視や遠視などの視力の障害があるのに、視力を矯正するための眼鏡やコンタクトレンズを使用しないでいると、眼自体はもちろんですが、眼の周りの筋肉、そして体全体の筋肉をも緊張させます。
特に近視があるのに視力矯正していない人が本を読んだりコンピュータで作業すると、自然と身を乗り出したり顔を対象物に近づけるなどしてしまうため、姿勢が悪くなってしまいます。
これらが肩こりを招くといわれています。
眼鏡やコンタクトを何年も変えていない方や、視力が悪いのに眼鏡をしていない人、コンピュータをよく操作する人は眼精疲労による肩こりをご覧ください。詳細な原因や解消方法に解説しています。
原因4:肥満、なで肩
肥満やなで肩の人は、通常の人よりも抗重力筋の負担が大きいため、肩こりを引き起こしやすくなります。
なぜ、肥満の人は肩こりになりやすいか?
肥満になると、もちろん腕にも脂肪がついて重くなります。また、肥満になる方の多くは、定期的な運動をする機会も少ない傾向にあるため、抗重力筋の筋力も不足している可能性があります。つまり、単純についた脂肪の分だけ重くなった腕を吊り上げる負担と、それを支える筋力不足のアンバランスが、肩こりにつながると考えられています。
なぜ、なで肩は肩こりになりやすか?
なで肩は、(1)単純に肩甲骨の位置が正常よりも下がっている場合、(2)猫背が背景にあって肩も丸くしているために肩甲骨の位置が変化している場合とに分けられます。
(1)の場合は、抗重力筋が常に引き伸ばされている状態にあります。筋肉は引き伸ばされると、筋肉自身が通常持っている緊張が更に強くなる傾向にあり、この緊張が血流障害を招き肩こりへと発展します。
(2)の場合では、胴体に対して肩甲骨や腕が重力によって前側へ引っ張られる状態(抗重力筋にとっては肩甲骨と腕の重さがより強くのしかかる状態)になります。すると、より強い筋力が要求されるため、筋肉は更に強く働かなければなりません。これが筋肉の血流障害を招き、肩こりにつながります。
肥満の人やなで肩の人は、肥満、なで肩による肩こりをご覧ください。詳細な原因や解消方法に解説しています。
原因5:ストレス
ストレスと聞くと、人間関係や仕事上のトラブルなどを思い浮かべるかもしれません。しかし、例えば舞台に上がって話をしなければならないなど、緊張する場面に遭遇することも、体にとってはストレスなのです。
ストレスが強い状況にさらされると、交感神経が刺激されます。交感神経とは、脈拍や呼吸をはやめたり、筋肉が瞬時に働けるように緊張度を高めたりする神経です。オリンピックなどのスポーツ競技で、試合に臨む選手の多くでは、この交感神経が興奮しています。
仕事上のトラブルでストレスを感じた場合にもこの交感神経が興奮します。すると、全身の筋肉が緊張します。肩こりの原因となる抗重力筋も例外ではありません。更に、血管自体をも収縮させ細くさせてしまうため、筋肉の中では血流障害が起こり、筋肉疲労から肩こりを招きます。
さらにストレスによる交感神経の興奮は、血液にも変化をもたらします。血液中の水分が血管の外へ流れ出てしまい、ストレスが強い状況では血液がドロドロになってしまいます。すると、血管の中で血液が流れにくい状態になるため、筋肉に十分に血液(酸素や栄養素)を送り込めなくなる可能性が高まり、肩こりにつながります。
ストレスが原因かなと思われる人は、ストレスによる肩こりをご覧ください。詳細な原因や解消方法に解説しています。
原因6:額や眉、まぶたのたるみ
近年、美容整形の分野では、眉周辺の皮膚のたるみと肩こりの関係が注目されています。特に、額に皺が目立ってきた、まぶたのたるみが気になる、セロファンテープを貼るなどして眉を持ち上げると眼を開けやすい、と感じる方では、肩こりを既に持っているか、肩こりになりやすい傾向にあるようです。
人間は、寝ている間以外は殆ど目を開けて周囲のものを見ています。その時間は、長い人で12時間以上にもなりますが、その間ずっと抗重力筋は、頭の重さと腕の重さに加えて、間接的にではありますが額や眉の重さも支えています。その重さは軽いものかもしれませんが、12時間以上となると「ちりも積もれば・・・」なのではないでしょうか。
まぶたのたるみが気になる人は、額や眉、まぶたのたるみによる肩こりをご覧ください。詳細な原因や解消方法に解説しています。
原因7:体に適していない下着の装着、下着による体の締め付け
ボディラインを気にする方は、男女を問わず少なくないでしょう。しかし、気にしすぎるあまり、きつすぎる下着を着けると、肩こりを招く場合があります。
下着による必要以上の体の締め付けは、体にとってはストレスです。また、その装着が長時間になると、体だけではなく心に対してもストレスを与えます。すると、自律神経のうちの交感神経を刺激して、体全体の筋肉の緊張を招き、肩こりにつながったりします。
また、特に女性においてですが、バストサイズとブラジャーのサイズや形が合っていないと、肩紐が鎖骨や肩甲骨を下へ押し下げたり、バストの重さが肩紐を介して鎖骨・肩甲骨にのしかかってしまいます。すると、頭と腕の重さに加えてバストの重さも支えようと抗重力筋は更に働くため、筋肉の疲労から肩こりを招いてしまいます。
下着がきついと感じる人は、適していない下着による肩こりをご覧ください。詳細な原因や解消方法に解説しています。